アルド・チッコリーニ・リサイタル - 最初の一音で空気が変わる
今年84歳になるAldo Ciccolini(アルド・チッロリーニ)のピアノリサイタルに出かけた。イタリア出身で現在はフランスを活動拠点にしている彼はなぜか日本では「サティ弾き」として有名になってしまった。ちょうどサティがブームだった1980年代のときに彼が弾いた全集がリリースされたということもあったのだろう。ただ本来の彼の魅力それだけでない。そしてそれを示したがこのコンサート。
会場はすみだトリフォニーホール。前回ここに来たのはJan Garbarekのライブ。アコースティックな響きががとてもいい。今回は席も前から6列目の左側よりといういい場所だった。
リサイタルは定刻通りスタート。Aldo Ciccoliniは拍手の中、一人でピアノまでゆっくりとした足取りで進んでいく。ピアノに左を手おいて会釈をした後、ピアノに座るとすぐに最初の音を弾きはじめた。何の譜面もなく、すべてを暗譜で、まるで彼の体から音楽が泉のように沸き出してくる。最初のシューベルトのソナタの一音が鳴り始めた瞬間から、このホールは彼の世界に変わっていく。
シルクがすれるような柔らかな表現からハンマーを打ち鳴らなすようなフォルテまで、この長い曲を一気に弾ききるエネルギーが老齢の彼の体のいったいどこからくるのか。感動と驚きが一度に押し寄せてくる。唖然とする間に最初の曲は終わり20分の休憩。後半はムソルグスキーの「展覧会の絵」。最初と同じように登場し、あのプロナードの旋律が始まる。楽曲と演奏家が分ちがたく結びついている演奏で、僕が知っているどの「展覧会の絵」とも違う、緩急の激しい彼の「展覧会の絵」が演奏されいく。最後の「キエフの大門」の鐘の音がピアノでこれだけ表現されのを聴いたことがない。年齢を重ねた演奏家だけが表現できる世界なのか。
圧倒的な「展覧会の絵」の後、アンコールは3曲を演奏。最後まで高い集中力で楽曲に向かい演奏する姿は驚異的ですらある。そこには自分の演奏する音楽を絶えず高めていこうとする精神がみなぎっている。
前: iTuneに10,000時間以上の音楽を入れていく

