Harmut Esslinger - フロッグデザインの赤鬼さん
AXISの12月号の表紙を見てもしやと思ったら、やっぱり元フロッグデザインのHarmut Esslinger。80年代の終わり、まだインダストリアルデザインについて何も知らないころに当時在籍していたGeodesic社の上司に連れられていったのが、カリフォルニアのフロッグデザインのオフィス。そこの責任者が彼だった。
当時はまだフロッグデザインとApple社の関係がまだ有効に保たれており、Macsintosh II cxとかMacintosh SEの時代。彼は書籍の企画をかねての取材を快く受け入れてくれただけでなく、日本からやってきた見知らぬ僕たちにおしげもなく、Apple関連のさまざまなプロトタイプやモックを見せてくれ、中には小さなモニタだけにしか見えない本体に5インチスロットがあるという幻のホワイトモデルのMacintoshのプロトタイプも含まれていた。
Esslingerだけでなく他のスタッフも驚くほどフレンドリーで社内のカフェテリアに案内してくれたり、当時の最先端のCAD/CAMワークステーションをデモしてくれて感激したのを覚えている。今ではGoogleのカフェテリアが有名だけどフロッグデザインのカリフォルニア・オフィスは当時から全員が同じテーブルで食事をしたり会議をしたり、会議中でも食べられるようにクッキージャーが用意されていたりと自由でクリエイティブな環境をいかに作り出すかを工夫していた。今振り返ってもそうした人たちに出会えたことは僕にとって大切なことだった。つまり「本当にすぐれたデザインを生み出す人はどんな人たちなのか」を目の当たりにすることができたから。これがありがちな権威主義的で隠蔽主義的なデザイナー達だったらな僕がその後デザインに興味を持つこともなかっただろう。
オープンであること、何もつつみ隠したりしないこと、全てを共有していくことの重要性を僕はあのオフィスを訪ねたことで知ることができた。その後、東京にもどってから社内では日に焼けて顔が赤かったEsslingerのことを親しみを込めて「フロッグデザインの赤鬼さん」と呼んでいたこともなつかしい。
Esslingeは、このAXISのインタビューで「オープンソースデザイン」という言葉を使っている
オープンソースデザインは今の私に最も重要なキーワードです。簡単に言えば組織や権利などの一切の枠組みを外して外部からの多様な要素を取り込んで、さまざな実験を繰り返して、それが正しいものかどうか判断しながら、最終的なものに仕上げていくという、オープンソース形式のデザイン開発です。
まだまだ彼のデザインの探求は終わらない。彼の言う「オープンソースデザイン」の思想は「オープンソースデビジネス」と読み替えることもできるだろう。多様性を受けいれる開かれた世界・思想にこそ未来がある。

